東京ジレッタント

CD音源用のYou Tubeアップしました!


2019年12月に東京でライブをした後、次の東京ライブは2020年の3月の予定でした。


そんな中、コロナ禍が世界中を襲います。

未知の恐怖に怯え、死ぬのではないかと不安になる日々。


なにより私は両親の事が気がかりでした。


うちの父は人工透析をしています。

母も2020年の1月に肺炎で生死を彷徨いました。


もしも、私が好き勝手に行動しコロナに感染したら確実に両親にうつしてしまう。


そうなったら、二人が死亡する確率は高いであろう。

それがとにかく恐怖でした。


おまけに、ラジオ番組を三本生放送でやらせて頂いている身として、自分がコロナになったら番組に穴を開けてしまう。誰かに代役を頼むにしても迷惑がかかることには変わりない。


私は決めました。

ライブを滋賀県内のみにして、知っている方が主催のライブのみに出演しよう。


決まっていたライブを断ったのは生まれて初めてでした。


そこから三年あまり、私はほとんどライブをしないシンガーソングライターとなりました。


この間、色んな方から色んなご意見をいただきました。


今だから言えますが…。

アーティストよりも両親の命を優先した私を、否定する声ばかりでした。


同じ時期に、アーティストとしての私に存在価値が無いと言われたりもしてかなりキツかったです…。(これらの要素がドッカーンに拍車をかけました)


だけど、その人達の言う通りに私が好き勝手動いて、もしコロナに感染して両親が死亡したとしても、その人達が両親を生き返らせてくれるわけではありません。


言いたい人には言わせておこう!のスタンスで黙っていましたが、正直もどかしくて悔しくてたまりませんでした。


そんな中、東京のとあるライブハウスのライブがとても魅力的で、ここでもし出演出来たなら…と憧れを持ちました。


ここでライブをしてみたい。

夢が膨らみましたが、現実問題、今の状態では無理。


それでも日毎に大きくなる東京への思い。


憧れが大きくなるにつれ、私は東京の街が恋しくなりました。


You Tubeで東京の夜景ドライブ動画をずっと見たり、ひたすら東京の都会を歩くだけの散策動画を見たり…。


最初はライブハウスへの憧れだったのに、東京そのものへの思いが溢れてくる。


そしてふっと、東京って言葉いいよなぁ〜と思いました。


昔から、ドラマや歌、アニメなど、東京〇〇というタイトルは多いです。


東京、という言葉そのものにブランド力と魅力があるからこそ、タイトルして成り立っているのではないでしょうか。


ミーハーな私は、東京〇〇って感じの曲が作りたい!と漠然と考えるようになりました。


このモードになると、出てくるのは…。


そう。例の言葉メモ帳です。


色んな言葉が書かれたメールの下書きに、東京という言葉が追加されると、


東京〇〇


の、〇〇部分のアイディアが降りてくるのを気長に待ちました。


それからまたしばらく経った頃。


去年の夏前だったでしょうか。


好事家(こうずか)という名前を冠したとあるユーチューバーの方の動画を見て、好事家という言葉にぎゅんぎゅん惹かれました。


好事家。

意味は、物好きな人。


私はひらめきます。


東京好事家!!


おおっ良いのでは!?


ただ…。

なんか、とうきょうこうずかって言いづらいし、字面も良くないかなぁ〜とも思いました。


じゃあ、好事家を英語にしてみよう!


早速調べてみると、


ディレッタント


と出てきました。



東京ディレッタント。


字面良い!


ただ…。

絶対に噛む…!


なんかいい方法無いかな…と更にディレッタントを調べていくと、ジレッタントという風にも呼ばれている事を知りました。


東京、ジレッタント。

東京ジレッタント!!!


こ・れ・だぁ〜!!!


バチッとハマった瞬間です。


東京ジレッタントという言葉が出来上がり、楽曲のヒントを得るためにまた東京の夜景ドライブ動画を見ることにしました。


東京。

きらびやかで、洗礼されていて、人の数だけ欲望があって、綺麗も汚いも全てが存在している街。


そんな街を、

ーーこうして滋賀の、

ーー自分の部屋の、

ーーベットの上で寝転びながらスマホで見ている私。


一歩二歩三歩、ついでにおまけの四歩くらい下がって東京を見ているような感覚。


都会に暮らす人々を、物好きな視点で見ている。


これこそまさに好事家…!


歌詞の流れを考えついた私は、そこから制作を開始しました。


人間の欲望を皮肉たっぷりに描き、今まで自分が出会ってきた人達の矛盾なんかも歌詞に組み込みました。


例えば…。


私の仕事場に以前居た方は、やれ誰の息子がいい大学に入っただ、やれ誰の娘が離婚しただ、何でもかんでも知っていました。


他の同僚は、あの人なんでも知ってるね~と変に感心していたのですが、前述の娘さんの離婚はセンシティブな事だから誰にも言わなかっただけで、実は私も知っていました。


それなのに、誰かれ構わずべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべらべら喋って、まるで仕事場の情報屋みたいに振る舞う同僚に腹が立ちました。


あんなの情報屋ではありません。

ただのおしゃべりです。


そんな、過去に出逢った人や、もやもやした出来事を思い出しながら、歌詞が完成しました。


楽曲に関してはどうやって作ったか覚えていません。

歌詞先だったかも記憶がありません。(なぜだ)



この楽曲、今までで一番苦労したレコーディングでした。


自分で作っといてなんですが、どう歌えばいいのかわからなくって…。


好事家。

若干の変態さも入れたい。

だけど、のめり込まずに引いた目線も欲しい。


先生とどんな感じで行こうか話したのですが、その会話の中で先生すらも、この歌難しいなぁ…と言っていたのが印象的です。


私自身、歌いこなす事が出来るのか不安だったのですが、何度も練習して行く内に、高みの見物的な歌い方に定まっていきました。


だけど変態さも入れたかったので、それはCメロ辺りにちょろっと…。


そうして完成した東京ジレッタント。


いつか、この曲が東京で歌える事を願っています。





愚かしく目映い街


不可思議に魅了する


東京ジレッタント…。

(ブログ2023.8.8より転載)